フェレット物語I 海の救助隊

海の救助隊―フェレット物語 (新潮文庫)

海の救助隊―フェレット物語 (新潮文庫)

3冊めにリチャード・バック著、文庫「フェレット物語I 海の救助隊」を読みました。


文庫を読んでみようと思いました。文庫は生成り色の紙に活字が並んでいるのを見るだけで疲れてしまいます。しかし、これをクリアせねば何かが達成できない!とたまに高まるよく分からない克服の波に任せて読もうとすることがあります(読みきるかは別)。


昔その波が高くなった時、同じくリチャード・バック著、「かもめのジョナサン」を読んだ記憶があります(内容はあまり記憶にない)。


今回この「フェレット物語I 海の救助隊」を選んだのは次の3点の要素からです。


1.同じ著者の本を知っていた。
2.他に並んでいる本より厚さが薄かった。
3.挿絵を見た限り対象年齢が低そうだった。


2と3、あかんやん。


内容はタイトルのとおり、フェレットが活躍する物語です。実は海に面した国の海岸には人間の沿岸警備隊と並んで「フェレット・レスキュー・サービス(FRS)」があり、海で問題が起こると沿岸警備隊は人の救助を行い、FRSは動物の救助を行っています。


そのFRSに入ることを子供の頃から夢見ていたフェレットが大きくなって実際に入隊し、船のキャプテンとなり活躍します。


人間の距離の単位がフィートであることに対してフェレットはポーズ(前足)の大きさだったり、最後まで手を前足と書いているけれども、中身は全然フェレットでなくてもよい話で、挿絵や「前足」がなければ普通に人間の話として読めます。船の設定やらもなかなか詳しく、中身からは挿絵で感じたほどの対象年齢の低さは感じませんでした。


この物語の中には悪意とか怠惰とか人間の悪いところがひとつもありません。
登場人物はみんなまじめでやさしく、純粋で仕事に一生懸命です。確か「かもめのジョナサン」もひたすら速く飛ぶことを追求し高みに上りつめる話で、ジョナサンはひたすら純粋でした。

可愛らしい動物を用いているからそういう部分を出さないかな?と気にしていたんですが、あとがきを読んだら、これらの作品は作者のリチャードバックが邪悪なドラマや戦争、犯罪を描いた映画にうんざりしたらしく、「人が暗愚きわまりない悪ではなく最高の正義を選ぶ世界で互いに貶め合う代わりに、高め合う世界で暮らすのはどんな感じだろうか?どうしたら、そんな文明が生まれるだろう?そうしたらその文明はどこにたどり着くことになるだろう?」
と考えたことから生まれた作品たちだそうです。


その思想によるのかはともかく、シンプルでストレート、わかりやすい一冊で、大変読みやすかったです。


サイズと内容のシンプルさが今の僕にはちょうどよかった気がします。ページをめくると眠くなる文庫なのに、入り込んで次々とページをめくることができ、嵐の中の救助から全員無事に生還した後、クルーが安堵感に身を任せる場面ではすっかり入り込んでいて身震いしてしまいました。


これは入りやすいので本嫌いの方が最初に読む文庫にはいいですね。